豊かなコウモリの生活がトマムで明らかに: 10種を同定

 
占冠村トマムにある生物多様性・自然保護プロジェクト、ホロカトマム山林にて、コウモリ調査が
施行され、10種のコウモリが確認、コウモリの多様性が明らかになった。
 
調査は8月上旬に行われた。大雨のため調査が数日間実行できなかったにも関わらず予想を大幅
に上回る成果を得た。 調査前はこの調査地では森に棲息し低飛行をするコテングコウモリ1種が
確認されているだけであった。
 
調査監督の京都大学霊長類研究所、デイビット・ヒル教授は、かすみ網と「ハープトラップ」とい
う道具を用い8日間で50匹以上のコウモリを捕獲した。加えて「オートバット」というコウモリが
お互いを呼び合うソーシャルコール音声を発する器具を使用してコウモリをおびき寄せる手法が
用いられた。ヒル教授はコウモリの種、性別、妊娠の有無、成体か幼体かなどの事項を確認を
し、愛護的に野生に放つ手法をとった。
 
捕獲されたコウモリの大多数はコテングコウモリで、その他、ヒメホオヒゲコウモリ、カグヤコ
ウモリ、ウスリホオヒゲコウモリ、キタクビワコウモリ、ニホンウサギコウモリ、チチブコウモ
リ、テングコウモリが同定された。また、キクガシラコウモリとヤマコウモリは音声から同定さ
れた。
 
屋久島にてもコテングコウモリの研究中であるヒル教授は、今回の調査で同種の羽からDNA解析
のためのサンプル28小片を採取することが可能であったため、個体数動態や血族関係の同定に使
用する予定であるという。
 
北海道の哺乳類というと、ヒグマやエゾシカを思い浮かべる人が多いが、もっといろいろな小動
物が北海道にいることに気付いてほしい、と圓尾ホリッジ圭美さん(ホロカトマム山林代表)が
話す。ヒル教授は、コウモリは多数の虫を捕食するため、その数をコントロール、森のエコシス
テムには欠かせない動物だと説明する。
 
ホロカトマム山林にて同定された少なくとも3種類のコウモリは国際基準でも、日本の環境省レッ
ドリストでも絶滅危惧種、または準絶滅危惧種で登録されているものであった。近年、各国でコ
ウモリ個体数の減少が著しいと報告されている。 今ここに棲息しているコウモリを護ることが緊
要になっていると圓尾ホリッジさんが語っている。
 
(2012年8月27日 ホロカトマム山林によるプレスリリース デジタルコピーはウエブで閲覧可能
https://horoka.org/jp/press1.html)