ホロカトマムの植生調査2016と2018

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E地点、調査地北西、四ノ沢川支流近く、G3タイプの林床(種類が豊富)C3タイプ(混合広葉樹+約40%の針葉樹)の樹冠

 

2016年9月7日〜13日および、2018年10月1118英国の植物学者ベン・アヴェリスによりホロカトマム植生調査が施行された。今回の植生調査の目的はホロカトマム山林の生息状況を把握し近未来のマネージメントプランを立てるために必須と考えられる基本的な植生図の作成と植物群落を同定することである。

 

方法

 

高木・低木類の樹冠と地上植生は別々に同定分類した。植生の調査区(コドラート)は典型的な8地点を選んで調査した。高木・低木類の樹冠のコドラートは20 m x 20 m の面積とし、その中に5箇所、2 m x 2 mの面積で地上植生を調べた。このコドラートの他に調査区について植生類型について気づいたことは可能な限り記録している。植生類型毎の境界線は大まかに地図上に記録した、調査区内で発見した全ての種を記録した。

 

結果

 

森林(高木・低木類)の樹冠は9つのタイプ(C1 〜 C9)に分類された。地上植生は7つのタイプ(G1 〜G7)に分類された。地図上に記載する際に森林のタイプと地上植生のタイプを両方記載した(例:C4/G1のように表した)。地上植生は2つ以上のタイプがモザイク状や混合になっていた場合が多く、その場合は大まかな割合で示した(例:C2 / G1 70% G2 30%のように表した)。

 

個々の種の同定では、161種類の維管束植物と113種類のコケ類・地衣類(81コケ類、32地衣類)が見つかっている。ほぼ全ての種は在来種であった。

 

調査の結果、ササに代表される地上植生は種類が少なく、それとは対照的に森林(高木・低木類)の樹冠は種多様性が豊富であることがわかった。これは北海道の山地の森林植生の典型と言える。しかし、調査区内、湿った急斜面、特に調査区北西部は地上植生(林床)が豊富であり、草本植物やコケ類・地衣類などが興味深い群集を作っていた。

 

ホロカトマム山林は日本北海道の東部を代表する山地の森林植生の典型であり、種多様性の豊富な森林とササに代表される数の限られた地上植生の組み合わせで表現される。コケ類・地衣類は少なくとも最小限の種多様性を保っている。

 

東アジアと北アメリカ北東は距離は離れているが、気候は似通っており、森林の種は似通っている。ただし林床を埋めるササは東アジアの温帯の森林と反対側の北東の北アメリカの森林を区別する代表的な特徴の一つである。また調査区で発見された多くの種は英国の植生と共通の在来種であるが、気候はかなり異なり、 英国では夏は涼しく、冬の気温は調査区ほど下がらない。英国で森林(高木・低木類)の樹冠の種多様性を見出すには、緯度がホロカトマムよりもかなり南によることとなる。

 

地図

 

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上記地図に示される色分けによる区分は樹冠の種類によっている(C1-9)。

 

林床の植生の分類はGによって区分した。モザイク状になり、数種類のG区分が混合している場合には推定される割合で表示している(e.g. G1 70% G2 30%)。

 

コドラート法によるサンプリングの場所は、QAやQBなどで示す(CとGの区分も含む)。

(樹冠と林床の植生の詳細は植生調査レポートに記載)


調査結果レポート

 

ベン・アヴェリスによって植生調査結果レポート(PDF)が作成された。この植生調査結果レポート内には方法論、結果、考察、コドラートデーター、種リスト、50枚の生息地と植生タイプ毎の写真、植生図などが含まれる(英語)。以下レポートはこちらから閲覧できる。

エレンアヴェリス フォトエッセイ

秋色づく樹冠を見上げ、森の地面に密かに生きるきのこや苔を見下ろし、ホロカトマム山林の移りゆく豊かな自然を写真撮影。エレンのフォトエッセイはこちら

 

写真と種リスト

この植生調査の結果を一般向けにまとめたものを作成した。内容には樹木、低木、つる植物、草本(イネ科、シダ植物など)、そのほかの維管束植物、苔類、癬類、地衣類に分け、写真とともに記録説明したものである。

ホロカトマム山林に生息する維管束植物(リンク)、コケ類、苔類、及び地衣類の種リストリンク)は日本語と英語で別途閲覧可能。ここには可能な限り両言語でWikipediaへのリンクを貼っている。

 

謝辞

 

遠く英国からホロカトマムへ植生調査に来日したベンアヴェリスと調査をサポートしてくれたベンの娘、エレンに感謝の意を表したい。また2016年、帯広畜産大学の紺野康夫先生には植物の同定などでご教示をいただき厚くお礼を申し上げたい。またホロカトマム植生調査のすぐ後で2016年、斜里町、知床博物館でベンに英国の植生に関わる講義する機会・ご協力をいただいた。

 

 

Simon and Masumi Holledge, 22 March 2020