河畔林の伐採と植林

treecut1.JPG河畔林伐採 (2009-2010年)

 

2010年5月23日。保護区すぐ直前の河畔林が消えていました。すべて伐採されていることに気付いたのです。その時、悲しくもホロカトマム山林地、丸山の自然林の美しい姿にまるでキズがついたようだと記録しています。

 

四の沢川とホロカトマム川の合流する場所の両岸の渓畔林が伐採され、森林伐採のための重機の跡が残っていました。ここに元々育っていた本来なくてはならない広葉樹が切られています。中には直径50cm前後の80年に達するようなヤチダモもありました。ハルニレ、ケヤマハンノキ、ドロノキが主体です(地図:2019-1番と2021-1番)。

 
 
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後から分かったことですが、これは「冬期失業対策」の一貫として、国からの補助金を受け取るために行われた事業なようです。2011年秋にこの場所にアカエゾマツ (Picea glehnii) の植林を行う予定だということです。この事業は富良野地区森林組合が請負いました。(この土地は占冠村の村有地になります。)

 
origtrees1.jpg伐採前の林相 2009年3月(ビデオより編集)
 

単一樹種植林を河川敷という特殊な水はけの悪い土地に行うということは一般的に(国内国外含め)されておりません。本来の植林事業、経済林として良質な材木を早く生産する目的にそぐわないばかりか、河川による土地の浸食のため自然災害の揺り戻し(2次災害)が起こるなど動植物保全の点で価値が低いことが知られています。2010年6月11日に占冠村長に書面を通じて、元々あったような自然林の再生をお願いしたい、そのための費用を負担させて頂きたいと申し上げました。本来の土地に見合った環境に配慮した針広複合林を植林費用、そしてシカ対策の柵の取り付け費用などを含めています。また翌月には2019-1番の土地の購入申込書を送りました。7月24日には村長と村役場担当者2名と直接現地で会い、交渉し、私達の代案も前向きに検討するとのお返事を頂きましたが、その後、村の土地は売りませんという主旨のお返事をいただいただけにとどまりました。

 
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伐採後 2010年3月
 
村上報告書(2010年9月)

 

植物学者である(財)IGES国際生態学センターの村上雄秀先生に委託し、2010年9月13日に現地調査を行いました。村上先生に同年10月10日付けでこの伐採跡地の調査報告書を作成して頂いています。この報告書は占冠村役場村長にお渡ししました。村上先生の報告書はpdfでこちらのサイトで見ることができます: MYreport2.pdf

 
河畔林伐採(2010年10月)

 

他でも同様のことが行われています、近隣の渓畔林の伐採跡を見つけました。今回の場合は私有地であり、一の沢川の付近にあたります。ハーベスターで河畔林を破壊したあとが見られました、これが10月8日から9日の出来事と推定されます。写真で見るように、広葉樹林は残してありますが、松類は伐採されており、前回の伐採跡地と同様に、川沿い渓畔林に対する配慮がされていないことが分かります。

 
1sawabashi1.jpg河川敷の損傷 2010年10月8-9日 ハーベスターが河川を横断した跡を撮影
 
河川管理者(北海道)による調査(2011年5月)

 

2011年春に、河川法によるとホロカトマム川は北海道管理下にあるということを知り、問い合わせてみました。河川管理者担当者が2011年5月16日に現地視察に訪れ、占冠村林務担当者、富良野森林組合担当者と現地調査を行いました。報告書が2011年5月24日に作成されております(規定によりここで公開はできないということでしたが、河川敷の損傷を認める内容になっています)。 

 

長坂報告書(2011年5月)

 

環境学者である北海道立総合研究機構林業試験場の長坂有先生に委託し、2011年5月26日に現地調査を行いました。長坂先生に6月11日付けでこの伐採跡地の調査報告書を作成して頂いています。この報告書はまず環境を配慮し、ここ本来の土地に見合った針広複合林を植林についての説明に重点が置かれています。特に林業試験場で試験されているパッチワーク植林をすすめています。長坂先生の報告書はpdfでこちらのサイトで見ることができます: NYreport1.pdf

 

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占冠村役場担当者との植林計画協議(2011年9月)

 

役場林務担当者から連絡が入り2011年9月8日に協議会合に出席しました。結果、村の植林計画を見直し、2019-1番と2021-1番の1.3ヘクタールの村有地に新しくパッチワークの植林方法を採用すると、村側と合意を得ました。樹種はヤチダモ、ケヤマハンノキ、ドロノキ、シラカンバ、トドマツの5種です。ハルニレを含めることを希望したのですが、残念ながらハルニレは補助対象樹種に含まれていない(平成23年度造林助成制度による)ということでした。パッチは上記の資料内7メートル四方より植樹密度を少なくし、10メートル四方になります。

 

植林(2011年11月)

植林は2011年10月末から11月始めに行われました。 


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ホロカトマム山林のすぐそばでの植林の様子 2011年11月12日


 

Note: 倉本惠生らによると択抜時に木が損傷されるとのちに小径木の減少が見られるとしています。 'Post-harvest damage and subsequent survival following selection harvesting of small understory trees in a mixed conifer-hardwood forest in Hokkaido Island, northern Japan', ', これは 倉本惠生らが北海道幾寅(ホロカトマム近隣)において、林の択抜の際における木の損傷の状態を収集したデーターで報告しています。2010年7月にイタリアの学会 the Forest Engineering Conference (FORMEC)で発表されておりました。 

この発表によると "Maintaining abundance and diversity in understory trees after harvesting is important for sustainable management and biodiversity conservation in mixed conifer-hardwood forests . . .". (小径木の減少は、択伐が本来もつ意義からすれば大問題です。要するに木材も持続的に収穫できなくなるし、林本来の樹種多様性や構造多様性も減少するわけです。)としています。

 
SCH/MMH, 6 September 2012